憧れの油圧椅子、購入の巻

ピアノを弾く上で欠かせないもの、ピアノ椅子。ついつい見落としがちですが実はとっっても大事で奥が深い世界。今回長年憧れていた油圧式のベンチをお迎えしたので、そのお話をしたいと思います!

(という11月のお話なんだけど、いい加減下書きから書き上げようとキーボードを叩いております笑)



椅子といっても千差万別


ひとことに「ピアノ椅子」といってもその種類はたくさん。

ピアノのある家にならおおかた置いてあるであろう通称「背付き椅子」こと「トムソン椅子」や、ピアノのソロリサイタルなどで見かける本格的なベンチタイプの椅子。また、丸い座面がついていてくるくると回すことで上下させることができるタイプや、普通の食卓椅子のようなもの。など。


それぞれ良さも欠点もあるので、一概にどれこそが良い!とは言えないものです。


トムソン椅子

例えば、背付き椅子ことトムソン椅子。

高さの調整が簡単なので、発表会やコンクールといった何人もが椅子を使う環境だととても重宝します。日本でピアノを買うとついてくるのはこのタイプが多いですね。あとオーケストラでもコンマスとかチェロ奏者用に使われていたりもします。ピアノを扱う会場であれば、十中八九このトムソン椅子もあるだろう、というくらいメジャーな椅子です。手軽さの反面、構造上、座面が斜めになったり異音を発生させやすかったりする辺りが欠点です。




コンサートベンチ

革張りのどっしりとしたベンチ椅子は、見た目通り安定感に優れています。あの高級感や特別感は憧れるポイントでもありますよね。高さの調整は横のハンドルをくるくると回すことでできますが、これが割と手に負担を掛ける作業で、弾く直前に手が痛くなってしまいがちなのが難点。そして見た目通りお値段も20~50万とどっしりとしていて、でも使っているとガタが来てギーギーという異音を発生させたりもしてしまいます。



普通の椅子パターン

あと、ピアノ椅子がないお部屋とかも音大にはあったりして。もしくは、こういうスタイルが好きという方もいますが、とにかくそんなときは、こんなふうに普通の椅子を重ねたりして調整することもあります。普通にガタつきます。あと姿勢も悪くなります。だから部屋からピアノ椅子持ってくのやめて




油圧/ガス圧 式ベンチ


さて、そんななか、ここ数年ヨーロッパを中心に主流となってきている椅子があります。

それこそが、油圧式もしくはガス圧式と呼ばれるタイプの椅子。今回購入したタイプでございます!


パソコンルームにあるような椅子と同じく、高さを変えるときに横にあるレバーを引くと「しゅーーーー」っとなるタイプ。この機構が「油圧式やガス圧式」と呼ばれるものです。

リスト音楽院は9割このタイプの椅子ですし、ショパンコンクールを始め世界のコンクールでもこのタイプの椅子が使われるのが普通になっています。

というのも、ピアニストが椅子に求めることって、第一に安定感(=疲労感の少なさ)、第二に静音性、そして調整のしやすさ、だと思うのですが、この油圧ガス圧椅子はその全てを叶えているのです。



安定感

座面は革から不織までさまざまありますが、いわゆるベンチタイプのものと同じようなもの。

疲れにくさは、モノによりますが、それでも座面は柔らかく横に長いので少なくともほぼ木の板にそのまま座っているようなトムソン椅子的な圧迫感はありません。そして、油圧ガス圧式ベンチの主流は左右二本足なので、四つ足の椅子で起こるぐらつきも抑えられます。


静音性

よく椅子がギーギー言ってうるさい、というようなことがあります。

そもそも異音というのは、部品が多ければ多いほど出やすいもの。トムソン椅子にしてもコンサートベンチにしても、座面を支えるのはX状に交差した可動式の骨組みです。可動部がある以上、そこには隙間があるので、どうしても異音が発生してしまうんですよね。

その点、このタイプの椅子では、二本のガスなり油なりが充填されている筒が重なっているだけなので、ギーギーと音を発生させる物自体がないのです。


高さ調整のしやすさ

この高さ調整のしやすさこそが油圧ガス圧式の最も優れた場所なのではと思います。

トムソン椅子のように後ろに回ったり、コンサートベンチのように半立ちでくるくるして手首を痛めるということもありません。椅子に座って、レバーを引くだけです。体重をかければ下がるし、ちょっと腰を浮かせば上がります。この欠点といえば、ある程度の体重が必要なことくらいでしょうか。小さい子や女性なんかだと重さが足りずに椅子が下がらない、ということはちょいちょいあるみたいです。が、まぁ僕には関係ない話です(笑)



購入理由


そんな感じでピアノ椅子の種類や特徴がわかったところで、今まではどんな椅子を使っていたかという話ですが、

日本ではトムソン椅子。ブダペストではピアノをレンタルするときに購入した2万フォリント(8000円くらい)の簡易的なベンチ椅子です。こんなやつ。

自分で組み立てるやつです。


この椅子が、大袈裟でなく人生で初めて買った椅子なので、それはそれは感慨深かったのですが、なんせ作りが簡素なので最近はギーギーうるさいわ、傾いてるわ、ネジが閉めても閉まらんわという状態でした。ね?わかるでしょ、新しい椅子欲しくなる気持ち。

それでどうせ買うなら夢の油圧にするか・・・?日本だと高いけどヨーロッパなら安く買えるし??と。



今回買った椅子


さてさて、そんな油圧式椅子にもいろんな種類メーカー素材などあるわけですが、その中でもとりわけ代名詞的なメーカーがAndexinger(アンデクジンガー)。ドイツのメーカーで、アンデクジンガーの椅子といえば油圧を指すというくらいに、油圧椅子界のトップなわけです。

当然、僕も最初は特に考えなしにAndexinger狙いでいて、ネット通販で注文しかけていたんですが、他にも何かあるのかな、と調べていると、スペインのHIDRAU(イドラウ)だとか、イタリアDiscacciati(ディスカチャーチ)だとか、案外いろんなメーカーからも出ていることを知りました。


これだけあると、口コミだけ見ていてもわからないじゃないですか。実際に座ってみたくなるじゃないですか。でもピアノ椅子って大事なのに、実際に座ってみて買うということをあんまりしないんですよね。というか簡単にできないんですよね。(そもそもピアノ椅子を買うシチュエーションが少ないっちゅう話でもある)


そこで思いついたのがブダペストにあるスタインウェイ販売店のOpera Zongora terem(オペラ・ゾンゴラ・テレム)。その名の通り国立オペラ劇場の真裏にある、Zongora(ハンガリー語でピアノ)のterem(部屋)、つまりはピアノ屋さんです。

ここなら椅子がたくさんあったはず、と行ってみると

あった。


めっちゃあった。



結論から言うと、いろいろ座ってみて、一番手前の椅子を買いました。

アンデクジンガーやイドラウといった有名メーカーではなくノーネームですが、店員さん曰くリスト音楽院で使われている椅子はほぼこの椅子とのことで、それなら使用感もわかるし安心♪、とこれを選びました。

ちなみに手前三つがそのメーカーで、奥から不織、合皮、本革です。まぁ当然値段も違ってきますが、ここは革製品を長く使うのが好きなのと、いいものを長くという精神で思い切って本革にしました。お値段154000HUF。日本円で5万円強、というところでしょうか。例えばAndexingerの椅子を日本で買うと12万くらいするらしいので、いい買い物したんじゃないでしょうか。


店員さんがとても優しくて、俳句を嗜んでらっしゃって本当は5月に日本に行って京都とか行きたかったんだけどコロナでそれどころじゃなくなっちゃったのよ〜みたいな話をたくさんしてくれました。値段も大きいしなんか地味に緊張していたので、リラックスできて、人とのコミュニケーションっていいなって思いました。(日本語でも語彙がない)



いざおうちへ

ということで箱に入れてもらって持ち帰りまして(はい、抱き抱えて帰りました。行きの倍くらい時間かかりました。重かった・・・)


うん、ピアノの前に置いてみるとめっちゃいいかんじ。

テンション上がる!!


革製品なので、デリケートクリームで保湿などのメンテナスをしっかりしてから使い始めました。(靴用だけどな)

このいい子に育てよ〜というような気持ちで革のメンテナンスをする時間、好きなんですよね〜



という感じで購入から1ヶ月ほど経ちます。

ギシギシ言わないのがとても嬉しく、そして何より安定感が抜群。本革なので触り心地も気持ちいいし、とてもモチベーションが上がります。これはちゃんと日本に帰るときに持って帰らねば。どうやって送りゃいいんだろう。まぁそのとき考えようね。


とまぁ、最後とっちらかりましたが、油圧式ピアノ椅子をついに購入しましたよというお話でした。




それでは次回までSziasztok!!


▼椅子の入った段ボールを抱き抱える奴。(多分10kgくらいある。)翌日腕が死にました。

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梨本卓幹

1995年長野県千曲市生まれ。東京音楽大学付属高等学校ピアノ演奏家コース、東京藝術大学音楽学部ピアノ科を卒業。その後2020年ハンガリー国立リスト・フェレンツ音楽院にて修士号ディプロマを取得。ソロ以外にもピアノトリオ《Trio Roppi》や現代音楽ピアノデュオ《梨本宮里ピアノデュオ》、また即興演奏やライブエレクトロニクスを用いた新曲初演など、多岐にわたって活躍を見せる新進気鋭のピアニスト。