ソロで旅する音楽の道 -ディプロマコンサート②

この1年本番はほぼなかったのにここへきて、その埋め合わせをするかのごとく怒涛の本番ラッシュです笑

昨日6月8日は、先日のコンチェルトに引き続き、リスト音楽院ピアノ・ソリスト・コースのディプロマコンサート第2段、1時間のソロリサイタルでした!

(▲昨日の会場。Solti Hall)



ソロリサイタル


さて、ソロリサイタルということは当然一人なわけですが、何をどう弾いたのかというお話ですよね。

ソリストコースはなかなかフレキシブルなコースなので1時間以内で演奏しなさい、という幅広な課題でした。平時であれば当然お客さんが入ってコンサート、という形になるのですが、コロナな今日この頃ではやはりLIVE配信コンサートとなったのでした。


それはさておき、プログラムはといいますと、こんな感じ。

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バルトーク:ピアノソナタ BB88

ドビュッシー:映像第1集より『水の反映』

ドビュッシー:映像第2集より『金の魚』

シューマン:謝肉祭 Op.9

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せっかくなのでプログラムやら選曲理由について語っておこうかなと思います。


◯バルトーク

ハンガリーで学んだからにはなにかハンガリーの作品を演奏したいな、と思い選んだのがこちら。ハンガリーに来て割とすぐの頃から勉強していたものの、何かと本番に出し損ねていました。リスト音楽院ならリストじゃないの?という声も聞こえるような気がしますが、このリスト音楽院ではかつてバルトークも教えていたのです。民族音楽研究家としてハンガリー近隣諸国の民謡の採取・採譜・録音のような大変な偉業を成し遂げていて、ハンガリー語そのものが音楽になっているような作品を多数残したバルトークは、ハンガリーにとってとても大切な作曲家の一人です。


実は今回のプログラム、曲順がなかなか難しかったのですが、どうせならド頭からトップギアで行こう!ということでこの野性味あふれるこのピアノソナタからスタートすることにしたのでした。

この作曲当時というのは第二次世界大戦への緊張感が高まるファシズム政権下。時代の写し鏡のような曲でもあります。機会的・非人間的な動機、終わりが見えず永遠とも感じられる悲劇的な恐怖、野蛮な行動へのアンチテーゼなどなど。「これは演劇なんだ」と師匠に言われました。いわゆる音楽的な感覚からしたら、真反対に位置するような演奏の仕方をしないとこの曲の良さは伝わらない、がそれは「あえて」なんだ、と。そういった『スタイルの理解』について師匠にはよく言われました。間違ったスタイルで演奏しては全てが意味をなさなくなるのだよ、と。


ちなみに小さい頃、バルトークの民族感に妙な親近感を覚えていて、意気揚々とミクロコスモスやらソナチネやらを練習していた変な子供でした笑 その頃師事していた先生がバルトークの孫弟子にあたる武沢洋先生でしたので、リスト音楽院へと留学するきっかけは実はそのときにあったのかもしれません。



◯ドビュッシー

さて、野蛮で野生的な世界の次に演奏したのは、調和・響き・幻想といった丸っ切り別の世界の音楽。

ドビュッシーについてもたくさんのことをハンガリーで学びました。空間や時間の使い方、響きへの解釈、音色やタッチの話などなど。ある意味、ヨーロッパで日本と最も異なるのは響きの聴き方ではないかと感じます。日常的に狭い空間にいがちな日本と、天井が高く開放的なヨーロッパでは耳の使い方がやはり違うのかもしれません。受験で初めてこのホールで演奏したときに師匠に言われたことがまさしくそれで、曰く「まだヨーロッパの響きに慣れていないね。まずはそこに慣れていこう」。

振り返ってみると、この三年間で最も考えていたことの一つはやはり「空間の音にいかに耳を傾けるか」であったような気がします。今だってできているか定かではありませんが、少なくとも受験したときよりは聴くことができている、はずです。


今回演奏した映像の2曲「水の反映」と「金の魚」。これらはどちらも水に関係する作品。静かな空間に滴る水の音だったり、水中の泡や波、さらに雨や虹や雷や・・・ということをイメージして演奏を創っていきました。ロマン派以降、特に印象派の作品に関しては楽譜に書ききれない情報が多すぎるため、自分の想像力をいかに豊かにできるかが鍵だなと感じます。これから何度もこの作品たちは演奏していくことになると(なんとなく)感じていますが、その度にイメージを更新し続けていけたらいいなと思います。



◯シューマン

両極端な2つの世界を旅したあとは、人間臭いロマンティシズムの世界。

シューマンというととても内向的かつ愛の深い人ですが、その反面愛ゆえに川に飛び込むとか、好きすぎておかしくなるとか、狂人じみた部分も持ち合わせた、ある意味でとても人間臭い人物だったのだと思います。


そんな彼の描き出す「謝肉祭」。カーニバル。

ムソルグスキーの展覧会の絵のように、歩いているシューマンが様々な風景や人物と出会っていくという作品です。(ちょっと頭のアレな)シューマンの中で繰り広げられる奇々怪界で極楽珍道中なパレード。そこには数々の悲しんでいたり笑っていたり喧嘩している道化師たち、ショパンやパガニーニ、今の彼女や将来の妻、謎の言葉遊びにふらっと現れる蝶々・・・と面白い人物たちが次々に登場します。

この曲でのポイントはやはり、どれだけ曲ごとにイメージを切り替えられるか、そして自分の中での物語を紡げるか、かなと思います。この曲は今回のプログラムの中で最も新しい曲でした。初出しです。なので、今後何年もかけて熟成させていくべき作品だなとも感じています。ひとまず今回はその深みへと到る第一歩を踏み出せたという感じでしょうかね!笑


終わって解放


さてさて。

音楽留学ブログのくせにその機会がほぼないこのブログで、珍しく音楽のことを真面目に書きましたが笑


コンサートが終わったあと、数人の友人と共にレストランでご飯を食べ、ビールを飲み、終わったぜぇい!!ぷっはぁあ!としてきました笑

この日は日中30℃まで上がった夏日でしたので、アロハです!!!!(お気に入り。ZARA。)


ということでこれで国家演奏家資格が手に入る!?

とりあえずまた次に向かって準備を進めようと思います!!!


それでは、ホールを出たところにいらっしゃったリスト様とともにSziasztok!!

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梨本卓幹

1995年長野県千曲市生まれ。東京音楽大学付属高等学校ピアノ演奏家コース、東京藝術大学音楽学部ピアノ科を卒業。その後2020年ハンガリー国立リスト・フェレンツ音楽院にて修士号ディプロマを取得。ソロ以外にもピアノトリオ《Trio Roppi》や現代音楽ピアノデュオ《梨本宮里ピアノデュオ》、また即興演奏やライブエレクトロニクスを用いた新曲初演など、多岐にわたって活躍を見せる新進気鋭のピアニスト。