ディプロマコンサート(卒業演奏)をしました!

コロナコロナで外界と閉ざされて早50日強。

というタイミングで、なんと卒業試験であるディプロマコンサートに臨んできました!

試験と演奏自体はとても楽しめて満足だったのですが、本番まででいろいろとあったので、書き記しておこうかなと思います。


(演奏動画についてはこちらのOfficial Web Siteにてまとめられております。)

(▲試験会場のリスト音楽院大ホール。豪華絢爛この上なし!)



リスト音楽院の卒業試験て何するの?

そもそもリスト音楽院の卒業には何が必要なのかというはなし。

学校によっては修士論文を書かないといけなかったりしますが、リスト音楽院のMA、つまり修士課程では、2年目の終わりに『ディプロマコンサート』という演奏会形式の公開試験を受けることで、修士号を取得できます。論文はいりません。コンサートの時間は2時間弱のいわゆるフルリサイタルで、内容は基本的に自由です。各科によって曲や時代など諸々な決まりがあります。

ピアノ科MAのディプロマコンサートでは3つの時代の音楽を演奏すればOK。

人によってはオーケストラを雇ってコンチェルトを弾いたり、誰かと室内楽をしたり、ソロのみでやったりと、かなり自由にコンサートを作れます。


本来ならば。



コロナによる影響

ディプロマコンサートというのは、学校のホールにお客さんをたくさん呼んで開くコンサートなわけですが、外出制限が出ていたり、人が集まるイベントが禁止になっていたり、そして小中高大と全ての学校が閉鎖していたりするこのブダペストの状況では、まぁ、そんなもの無理っつー話なんですわ。

そもそも学校には入れませんしね。


だから、元々は5月22日に学校の2つあるホールのうちの小さい方「ショルティホール」にて、オールソロのプログラムで予定されていた我がディプロマコンサートはコロナウィルスの影響により大幅な変更を余儀なくされました。

(▲本来ディプロマコンサートを開催する予定だった「ショルティホール」)



でもじゃあ今回どうしたかといいますと、



◯曲は?

まず、曲目は大幅に減り、『30〜40分のソロ演奏』に変更されました。

元々僕は2時間弱を一人だけで全て演奏するつもりだったので、まぁ、残念ですよね。正直。

それでも、好きな作品を思いっきり演奏しましたよ。


今回演奏したのは

・ベートーヴェン:ピアノソナタ第3番 ハ長調 Op.2-3

・ショパン:幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61

の2曲。


僕は元々ソロだけのつもりだったからいいけど、コンチェルトや室内楽をプログラムに予定していた人はもっと大変な変更だったんじゃないかなぁ。




◯場所は?

4月の中旬ごろに以下の二つの選択肢が学校側から提示されました。


『ビデオを自宅で録画して送る』

or

『学校の大ホールで無観客&非公開で演奏する』


つまり、いずれにせよ公開されるものではないということで、

さらに先生方による審査は各自のご自宅で行われる、ということになりました。

(自宅ビデオの場合は、各先生方が後にアップロードされたファイルを自宅で審査、ホールでの演奏の場合は学校からのネットストリーミングによるリアルタイム審査)



どっちを選んだのか。

結論からいうと、学校のホールを選んだわけですが、どちらもリスクとメリットがあったわけです。



学校を選ぶリスク

・普段弾いているピアノではない。(学校に誰も入れていないから状態がわからない) 

まぁ、普段の本番もそうだけども。学校のピアノだからいい、という訳ではないのがハンガリー笑 (→結果的にはめちゃくちゃいいピアノだったんですけどね。)


・学校に行くために外に出ないといけない。つまりウイルスと触れ合う可能性が高くなる。

なんで外出制限が布かれているか、ということですね。そんなに離れていないとはいえ、外に出ればそれなりに人とすれ違い、また、学校内においても、他の学生やスタッフがいつどこでウイルスと触れ合っているかは分かりません。


・日程がだいぶ早まる上に、日にちは学校で勝手に決められる。

この提案がされたのが4月なかば辺り。早くて4/28だったので、練習状況によってはかなり危険でした。まぁ?そんなギリギリの状態じゃありませんでしたけどね???ほんとですよ?


・もし、状況が変わって「やっぱり学校使えませ〜ん」となったときのメンタルがつらい。

誰も明日がわからない状況だったのであり得る話です。振り回されたくないもん。


etc...



ね?そう考えると案外リスキーじゃありません??




家を選ぶリスク


じゃあ家を選んでおけばいいのかというと、それはそれで問題がありまして


・家のピアノの状態が悪い。

やはり家のピアノというのも(人によりますが)、日本のように万全な状態というわけではありません。ラッキーなことに、我が家にあるYAMAHAのG2は比較的良い状態なので、「絶対無理」とは言えないものの、学校のピアノに比べたら、まぁ、劣るわけです。人によっては日本では聞いたこともないようなメーカーのおじいちゃんピアノを使っていたりしますしね。


・響きが部屋以外の何ものでもない。

演奏において響きというのはとても大事な要素なんですが、まぁ、部屋とホールではどうしたって差が出ます。


・録音状態が粗悪になる。

ホールではプロの音響が入って録音マイクを設置してくれますが、家では自分の持っているハンディレコーダーを使ってなんとかするほかありません。もちろん、今使っているハンディレコーダーだって悪い物ではありませんが、プロの録音とでは差が出ないわけがありません。それに、今回は録音審査である以上、その辺は気を使いところ。


・外の音が入る。

緩徐楽章のロマンチックないいところで、ピンポーーーーン!とかブロロロロロロとか雑音が入ってくるのは、いろいろと、ねぇ?

(▲とかいいつつ、普段から宅録(自宅で録音録画すること)をしていたりもします。)




ホールを選んだ理由は?

そんなリスクだらけの選択肢を天秤にかけ、その結果ホールでの演奏を選んだ理由。


その1

やはり、ステージで弾きたい。大きなピアノを弾きたい。そしてなによりリスト音楽院の大ホールという、まず普段弾くことのできない特別な場所で演奏したい。

(▲リスト音楽院の大ホールにあるSteinway&sonsのフルコンサートグランド。驚くほど最高でした。)


やはり演奏家はステージこそが夢の舞台なわけです。

ステージ上でどうパフォーマンスできるか、どうしたら会場に、聴衆に音を響かせられるか。どうしたら素晴らしい音楽を伝えられるか。

そんなことを考えて日々練習しているのです。


そして、今回はなんと学校の大ホールを使わせてもらえると!!!

オケのコンサートを週4くらいで聴きにいっていたあのホールで、ソロピアノを弾ける機会なんて、そーーーうそうないんですよ。



その2

プロの録音、録画をしてくれる。


そう、家でもホールでも、演奏を映像という形で残すことができるわけですが、どうせならホールで弾いてるのを残したいじゃないですか。

しかも今回はリスト音楽院の録音チームがマイクをたくさんセットして、いいカメラで撮ってくれる。

演奏がどうなるかはさておき、少なくとも思い出にはなります。うまくいけばYoutubeとかで皆さんに届けられるかもしれない!ってね。



その3

ウイルス対策もしっかりしていた。


学校側も、1日に演奏する学生は3人のみとし、それぞれの演奏者が学校内で鉢合わせることのないスケジュールを組んでくれました。

さらに、各演奏のあとは必ず楽屋、ステージ、ピアノの除菌作業が入り、入館時には体温チェックがあって37.2℃以上ある人間は入館できない、など、徹底したウイルス対策もありました。



その4

守るより攻めたいじゃん?


家で録音するというのは、まぁいってみれば何回でも撮りなおせるし、好きなタイミングで何度もチャレンジできるわけです。もちろんそれはそれで難しさが山ほどあるんですが、それはさておき。

大学院卒業の演奏。たった一回の大事な演奏機会。

どうせなら攻めておきたいな、という、まぁ、プライドというか意地とうか。そんな感じ(伝わって笑)





まとめ


長くなってきたのでぼちぼち閉めましょう笑


こんな事態は誰にとっても初めてなわけで、そんな中いろんな制限付きとはいえ卒業演奏を無事終えられたことに正直ほっとしています。

そして、今回の演奏は我ながらなかなかに満足のいくものだったので、この2年間の留学の成果としては恥ずかしくないかな、と思ったりもします。


あとピアノがめちゃくちゃ、ほんとに、驚くほど、最高の状態でした。

正直ハンガリーのピアノ事情は決して恵まれているとはいえないのですが、そんな中、こんないいピアノあったのかい!!っていう笑

なんにせよ、よかったです。


もちろん、まだまだ先は長い演奏家人生。

甘えず、地道に、意地を通しつつ、そして何より楽しんで送って行けたらいいなと感じております。




はい。

そんなところで、久々のマジメ回、卒業試験であるディプロマコンサートについてでした。

それではみなさん、szia sztok!!

(▲演奏直後の晴れやか??な自撮りon the Stage笑)

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梨本卓幹

1995年長野県千曲市生まれ。東京音楽大学付属高等学校ピアノ演奏家コース、東京藝術大学音楽学部ピアノ科を卒業。その後2020年ハンガリー国立リスト・フェレンツ音楽院にて修士号ディプロマを取得。ソロ以外にもピアノトリオ《Trio Roppi》や現代音楽ピアノデュオ《梨本宮里ピアノデュオ》、また即興演奏やライブエレクトロニクスを用いた新曲初演など、多岐にわたって活躍を見せる新進気鋭のピアニスト。