梨本卓幹の留学日記

ピアニスト梨本卓幹によるリアルタイムハンガリー留学譚

2021-05-15

ハンガリー在住の日本人留学生がコロナワクチンを打った話

すっかり陽気は春。ヨーロッパでは夕方の外の空気が気持ちの良い、そんな今日この頃です。

さて、多くの人の生活を狂わせたコロナウィルス。こやつに対抗するために各国各社が必死になってワクチンを開発しています。

日本でもようやく医療関係者や高齢者への接種が開始され、それはそれでまた阿鼻叫喚とした予約戦争が巻き起こっているようですね。こんなことでオリンピックをやるといっていられるのが国外から見ていて本当に不安というか正気か?と思わずにはいられませんが、海を超えたここハンガリーは、ワクチン摂取率世界トップと言われています。

先日、そんなハンガリーでコロナワクチンの1回目を摂取してきたよ、ということでこの記事を書こうと思います。

※本記事はコロナワクチンについての体験談が綴られていますが、あくまで個人の経験、思考に基づくものです。医学的、学術的な視点では間違っていることもあり得ます。ご了承ください。

どこのワクチンを打ったの?

まず皆さん気になるであろうワクチンの種類ですが、今回摂取したのはアストラゼネカ社のワクチンです。(あとで詳しく書きますが、僕の場合は副反応は微熱と筋肉痛に似た痛みのみでした。)

アストラゼネカワクチンは、ヨーロッパ各国で「血栓ができやすい」などと言った理由から、若年層への使用が禁止されていたり、ファイザーを待つべきだとか言われたり、そもそもワクチン怖いよね、とか言われたり。

多くのことを大変考えさせられました。

考えた様々な思考。

問1。本当にワクチンを打つべきか?

まずこちらの問題にぶち当たりました。

ワクチンの効果も副反応もイマイチわからん。メーカーによって、国によって、情報によって様々な意見が飛び交っている。日本ではワクチンをみんなが打てるのなんかいつのことやらという状況。ワクチンを打って命を落とすこともあるらしい。

・・・え、本当にワクチン打つ必要あるんだっけ??

そもそも、世界的にも効果や副反応がよくわかっていない薬を、海外の一人暮らしで使用することのリスクは、冷静に考えてなかなか大きいわけです。

しかし、この爆発的に感染者、重傷者が増えるヨーロッパにおいてワクチンなしで生活していくことと比べた結果、『ワクチンなしのリスク > ワクチンのリスク』と判断したわけです。

また、ハンガリーでは先日『免疫証明書のある者のみ、博物館や美術館、レストランなどの使用を認める』という内容の政令が発表されましたし、ヨーロッパ全体を見ても近いうちに『ワクチンパスポート』による自宅隔離の免除や行動の自由化が期待されています。

(※免疫証明書とワクチンパスポートは別物)

何にせよ、ワクチンを打っておいた方が、これからの行動を考えると良さそうだという判断をしたのです。

問2。どのワクチンを打つか?

さてそうすると思い浮かぶのがこの問。

現状(2021/5/10現在)でのハンガリーにおける選択肢は

・アストラゼネカ

・シノファーム

・スプートニクV

・(ファイザー)

の4種類。

いろいろな話を聞いていると、一番安心できるのはファイザーでしたが、ハンガリー政府が決めた「16~18歳にファイザーを」というルール?により自分から選ぶことはできません。(5/13よりファイザーを選べるようもなったらしいものの、それには3月上旬までのSMS通知?とやらが必要とのこと。詳細不明。)

次点で優秀&安全性の高いと言われるのがアストラゼネカ。しかし、前述のように血栓などの副反応が騒がれていて怖い。禁止にしている国もある。

また他にも、EUで未認可の中国製シノファームや、最近EUでも認められ始めたロシア製スプートニクVという選択肢もありました。ハンガリーでこれらのワクチンが使用されている理由には、政治的・共産的ないろいろな思惑・策略があるのでしょう。その開発の背景への謎などもあります。

しかし、ハンガリーが早々世界のワクチン摂取率トップに躍り出られたのはこれらシノファームやスプートニクを使用していたからでしょう。実際身の回りにこれらを摂取した方もたくさんいらっしゃいます。

さて、このような選択肢の中からどのようにしてアストラゼネカを選んだかというと、簡単です。日本で認可される見通しのないものは避けたのです。

シノファームもスプートニクも打っている人はたくさんいますし、実際のところ安全なのでしょう。でも今後もし日本で「××か◯◯のワクチンを打っている場合のみ、様々な規制を免除する」となった場合、シノファームやスプートニクはその対象に入ってくることは無さそうだと思ったのです。

その点、アストラゼネカは既に日本で認可の準備が整ってきているようなので、心配ありません。

(もちろん、ワクチン打ったから規制解除となるかどうかなんて分かりませんけどね!)

さて、様々といいつつ、問が2つで終わってしまいました。まとめるの上手すぎたかな。笑

実際の流れ

それではワクチンの予約から実際の接種、その後の反応までをざっとご紹介。

1.まずは登録。

まずは「ワクチンを打ちたい人」の列に並ぶ必要があります。

https://vakcinainfo.gov.hu/

ここで名前や年齢、住所などと共にTAJ番号を入力します。TAJ番号とは、ハンガリーの国民保険の番号のこと。ハンガリー政府の奨学金Stipendium Hungaricumをいただいている身分である僕はこのTAJにも加入しています。

(最近TAJ番号がない在留外国人も登録できるようになったらしいです。)

この時点では「やっぱやーめた」がいくらでも効きます。とりあえずみんな登録が吉。

2.その後予約。

この過程が見過ごされがちだと勝手に思っています。というのも僕自身、届いたメールをガン無視していたから笑

1.の登録が終わってしばらくすると「ここで予約できるよ」という内容のハンガリー語メールが届きます。

そこに記されたリンク、https://www.eeszt.gov.hu/oldalvalaszto.jspにてまた名前や番号、TAJ番号を入力し、ワクチンの希望接種日、種類、場所を選択します。

この場所の選択ですが、郵便番号でのみ表示されます。地図アプリなどでどの程度離れているか、行きやすいかは確認してくださいね!

(ここで操作をミスって一度1時間後を予約した梨本は、取り消すためにハンガリー語しか通じない電話窓口と戦う羽目になったのは、また別の話。)

3.問診表の記入

予約完了メール(これまたハンガリー語)に添付されたリンクから問診票をGETし、記入しておきます。これは現地でもできますが、事前にできるなら済ませた方が楽。

日本でもよく医者でかかされるあれです。この写真のデータもそのうち変わるかもしれませんので悪しからず。

4.覚悟を持って接種へGO!

ここまで準備できたら、もうその病院へ向かうだけです!

持ち物は

・パスポート

・問診票

・アドレスカード

です。

特にアドレスカードは忘れがち。僕も忘れました。

ということは忘れても、その場で住所を言えばいいのですが、「げっ来たのに受けられないか!?」という嫌な気持ちを味わうことになるので、持っていきましょう。

僕の行った病院では、

①まず門のところに係の人がいて、名前と予約時間を伝える。

②指差された建物の入り口に行き、兵士さんに名前を伝え問診票を渡す。熱も測られる。

③優しい女性の兵士さんに案内されて接種の階までいく。

↑ここまでハンガリー語↑

↓ここから英語↓

④お医者さんとお喋りしつつ、どのワクチンを打つか確認。

⑤歯医者のような椅子が7台くらい並んだ処置室へ通され、好きなところへ座らせられる。

⑥パスポートやアドレスカードを渡し、住基ネット?のようなもので本人確認。

⑦いざ注射?

⑧処置室の前の待合室で20分ほど待機。

⑨別の係りの人に接種カードと、次回の予約に関して説明されておわり!

といった感じでした。

冒頭で登場したこちらは、恐れ多くも「写真撮ってもいい??」と聞いたところ、「いいよ!撮ってあげるよ笑」と撮ってもらった写真です

なんとも言えない表情笑

注射自体は痛くも痒くもない、という感じでした。筋肉注射なので、日本でよくある皮下注射と違い、垂直に針が刺されるわけですが、別に痛くはなかったです。

術後の様子。副反応

注射直後は、ちょっと左肩が腫れてるかな?筋肉痛かな?という程度の痛みだけでした。

これはおそらく筋肉注射の共通の症状なので、そんなに大したことはありません。

ここで強くおすすめするのが、帰宅するまでに

・ペットボトルの飲み物

・ゼリーとかヨーグルトとか簡単に食べれるもの

・あったかい格好

を用意しておくことです。

なぜか。

人によってはとても高い熱が出たりするからです。

僕はその日はなんともなく、次の日の夕方に頭痛と微熱(37度ちょい)が出ました。

同時にワクチンを接種した方はその日のうちに発熱し、次の日は関節痛を伴う40度の熱が出てしまうほどでした。

反応は人によるようです。ただし、上記の対策をしておけば安心にこしたことはないし、どうやら水をたくさん飲むことが血栓予防にもなるようです。

まとめ

ということで、『ハンガリー在住の日本人留学生がコロナワクチンを打った話』でした!

アストラゼネカワクチンは1回目接種後、通常12週間後に2回目の接種を受けます。がそうすると8月に予定日が来てしまい日本に帰ってしまうので、このまま何事もなければ最短で認められている4週間ほどで2回目を打とうと思います。

しかし外国人にワクチンを接種していただけるというのは、本当にありがたい話です。

日本が今年オリンピックを強行するならば、当然海外から様々な方がいらっしゃり、そうするとどうしたってウイルスの侵入は防げないでしょう。すると自分を守るための対策は取っておいた方がいい。しかし日本のワクチン接種のスピードはオリンピックを開催すると言っている国とは思えないほど遅い。日本でワクチンを打てばいいや〜というのも怖かったので、今回のワクチン接種に踏み込んだのでした。

まぁ、オリンピックの話は置いておいて、

海外でこの福祉を受けられるというのは本当に幸せなことだと思います。しかし、逆にこれは国民だなんだと言っていられるほどコロナに悠長に構えていられないということの表れでもあるのでしょう。

ワクチン接種したからといって気は抜けませんしね!

免疫証明書が届いたらまた記事を書こうと思います。

ということで、Sziasztok!!

▲接種後、自由に持って行って良さそうだった『ワクチン打ったよ』ステッカー

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梨本卓幹

1995年長野県千曲市生まれのピアニスト。東京藝術大学音楽学部、ハンガリー国立リスト音楽院修士課程、同音楽院ソリスト・ディプロマ・コース修了。ソロもアンサンブルも幅広くこなすピアニスト。オフィス・クルテ代表。
公式HP→ https://takumi-nashimoto.com